管理組合が明け渡しを求める場合

管理組合の対応について


マンションの駐車場に、管理費や駐車場使用料を滞納したまま行方不明となっている住人の自動車が放置されている場合、管理組合はこの放置自動車を撤去するにあたって、どの様な方法を取ればいいでしょうか?
管理組合としてはこの区画を他の区分所有者に貸し出すこともできないので,困っています。

よくある質問の一つです。

解決方法の流れとしては以下になります

STEP1  解除通知


まず敷地内駐車場から移動しようとしない自動車の撤去方法としてその区分所有者に貸し出していた専用使用駐車場区画の駐車場使用契約を管理規約と駐車場使用細則の規定にしたがって解約する旨,その区分所有者に内容証明郵便で通知することになります。

ここで注意していただきたいのが、駐車場使用契約の解約を通知しているとはいえ,当該自動車を管理組合の側で勝手に処分したりすれば,後で自動車の所有者から刑事責任を追及されたり,民事上の損害賠償責任を問われるおそれがあることです。
また,公道や他の敷地に移動するだけでも,移動中に自動車が傷ついたり,あるいは移動先で第三者に傷つけられたりすれば,やはり損害賠償請求を受けるおそれがあります。このような自力救済は全くお勧めできません。

STEP2  訴訟提起


法律的にはまず,相手方に対して問題になっている駐車場区画の土地明渡請求を起こすことになります。その際,相手方はそもそも解約を認めないおそれもあるので,裁判上これまでの駐車場使用契約を解約する旨の意思表示をすることになります。この際,未払いの駐車場使用料があれば同時に請求しておきます。

なお,相手方が区分所有建物に不在であれば,住民票や戸籍の附表を取り寄せて現住所を調べ上げることになります。
それでも相手方の現住所を知ることができなければ,公示送達という手続を利用します。これは,一定の事項を調査した上,裁判所に報告することが前提になりますが,裁判所に送達書類を2週間掲示し,それから2週間経過後,相手方に書類送達の手続が完了したとみなされる手続です。

STEP3  強制執行


土地明渡判決を得た後でも,まだ管理組合が自分で放置自動車を撤去してよい,ということにはなりません。

相手方が放置自動車を移動させる様子がなければ,この土地明渡判決に基づいてさらに土地明渡執行を,当該土地を管轄する地方裁判所の執行官に対して申し立てるということになります。
なお,この際,自動車が価値のあるものであれば,自動車競売申立手続を申し立てることになります。
一方,自動車が無価値のものであれば,土地明渡の執行期日において,執行官にその旨を判断してもらうことになります。無価値と判断された自動車の処分権限は債権者(管理組合)に属するものと考えられていますので,ここでようやく管理組合が放置自動車を自ら処分することが可能になりますが、撤去費用は管理組合もちになってしまいます。


法人化していない管理組合を原告とする場合

区分所有法第26条第4項に「管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のための、原告又は被告となることができる。」とあります。

管理者には通常は理事長が該当します。

管理規約で管理者に職務権限内で包括的に訴訟追行権限を与えている組合もあります。
しかしこのような規定のない組合の場合は、集会で個別の案件毎に授権を受ける必要があります。

管理組合法人でない場合は、管理者が自己の名において訴訟の当事者となることができます。
法人化されていない管理組合であっても、「権利能力なき社団」の要件を満たせば、管理組合自体が原告となることもできる(民訴§29)。
ただ、この方法は手間がかかるので、前述の方法を取るのが一般的です。

ちなみに、管理組合法人は、区分所有法上、当事者適格があります。

【参考条文等】
●マンション標準管理規約(単棟型)
第38条(理事長)
2 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。
 
 
●建物の区分所有等に関する法律
第26条(権限)
4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
 
第47条(成立等)
8 管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。 
 
●民事訴訟法
第29条(法人でない社団等の当事者能力)
 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。


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