明け渡しの流れ

駐車場の明渡しの流れ



放置自動車の撤去のための法的手続は、運輸支局の登録の有無によって異なってきます。

登録のある(ナンバープレートの付いている)普通自動車は、法律上は不動産と同じ性質を有するとされていますので、差押えや売却手続は不動産競売とほぼ同じ手続で行われます(自動車競売手続といいます)。

登録のない(ナンバープレートの付いていない)普通自動車と軽自動車は、法律上は動産と同じ性質を有するとされていますので、差押えや売却手続は一般の動産として行われます(動産競売手続といいます)。

さらに、所有者と連絡が取れる場合と、連絡が取れない場合とで対応が変わります。

「登録のある普通自動車」につき「所有者と連絡が取れる場合」を例にとって、説明させて頂きます。

STEP1  内容証明郵便の発送

所有者に対して、内容証明郵便にて、未払い駐車料の請求、契約解除の通知、自動車の撤去及び駐車場明け渡しの請求をします。

記載内容は、

・平成○○年○月○日までに未払い駐車料○○万円を支払ってほしい。
・期限内に未払い駐車料の支払がない場合には、不払いを条件として、この内容証明郵便により契約解除の意思表示を行う。
・により契約解除がなされた場合には、解除の日から○日以内に自動車の撤去及び駐車場の明け渡しを請求する。

所有者が留守にしがち等の理由で、内容証明郵便が受け取られずに戻ってくる場合があります。その場合には、送付書を添付して、再度発送します。普通郵便でもよいですが、特定記録郵便にしてもよいでしょう。
送付書には、「平成○○年○月○日付でお送りした内容証明郵便が、留置期間経過により戻ってまいりましたので、改めて本日お送りします。」といった記載を。

そして、後日訴訟となった場合の証拠とするために、送付書はコピーを取って保存しておいて下さい。

STEP2  訴訟を提起する

所有者が、上記を無視した場合は、訴訟を提起することとなります。

訴状には下記を盛り込みます。

1、契約解除の意思表示
2、駐車場の明け渡し請求
3、未払い駐車料の支払請求
4、解除後の不法占拠に対する駐車料相当の損害金の支払請求

STEP3  債務名義の取得

裁判所で上記請求の勝訴判決を取得します。

特に、被告である所有者が答弁書を提出することなく期日に欠席した場合は、「欠席裁判」ということになり、勝訴判決を得ることができます。

STEP4  自動車の差押え(競売手続)を裁判所に申し立てる。

勝訴判決の判決正本を債務名義として、自動車の差押え(競売手続)を裁判所に申し立てます。

そして、駐車場の貸主自身が自己競落するか、第三者に競落してもらいます。貸主が中古車販売業者に話をして競落してもらうのも良いでしょう。

自動車の価格評価において価値があると認められ、競落ができ、自動車を撤去できれば、事件は解決となります。

STEP4-2 自動車競売ができなかった場合には不動産の明け渡し執行

競売を申し立てても、自動車の価格評価において、価値があると認められない場合には、競売手続の費用をまかなうことができないと判断され、裁判所は競売手続を途中で取り消します。

そこで、その場合には、既に言い渡されている勝訴判決に基づいて駐車場明け渡しの強制執行を行うことになります。

この強制執行は執行官が行ってくれます。自動車に価値があると認められない場合であっても、貸主が自分で勝手に無価値と判断して処分してはいけません。あくまでも判断するのは執行官です。その判断は、執行官が、駐車場明け渡しの強制執行実施日において当該駐車場にある自動車を「無価値」であると宣言し、その「無価値物」の処分を債権者(貸主)に委ねる、という形を取るのが一般的です。

自動車競売で処理できない自動車については、明け渡し執行の際に、駐車場の明け渡しに伴う残置物となり、ゴミとして処理することができます。


STEP5 登録自動車をゴミとして廃棄処分する場合の問題点

ゴミとして処理するとしても、ナンバープレートが付いているので、廃車手続を行う必要があります。

しかし、廃車手続は自動車の登録名義人しかできません。そのため、駐車場の明け渡し執行で登録自動車をゴミとして廃棄処分する際には、貸主は廃車手続を行うことはできません。

実務上は、ナンバープレートの付いたまま、登録自動車を解体業者に引き取ってもらうことになります。


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